新刊ががんばってる
4月16日。
津原泰水の新刊の発売日だった。
新曲のCDは決まって水曜日に出るが、小説にそんな縛りはないから、今日のような木曜日に出てもいい。
まあ小説という媒体の自由さは、そんなところにも表れているわけである。
しかし緊急事態宣言の中で新作を出すことの心境は、クリエイター職ではない俺には推し量りかねるが、休業要請は古本屋には出ても本屋には出ていないようだから、まだ休まる方なんだろう。
いかんせん、津原が好きだ。
俺は「ヒッキーヒッキー・シェイク」のサイン本を持っている。
これを含めて、津原は最近、復刊が著しい。
12月に「妖都」。
- 作者:津原 泰水
- 発売日: 2019/11/20
- メディア: 文庫
1月に出たものには直接的なタイトルをつけていて、レジに持っていくのが恥ずかしかったのを覚えている。
- 作者:泰水, 津原
- 発売日: 2020/01/23
- メディア: 新書
しかしこいつは天才だね。
本人は幻想小説を書いているつもりらしいんだが、ミステリーもかけるからすごい。
俺はミステリーを書く作家(とりわけ本格ミステリの審査員とかやってる奴)は、乏しい発想力と下品でちまちました整合性を求めている「ミステリー脳」になってしまっていると思っているから、まあ器量が小さいというか、男らしくないと思っているのだけれど、こいつのミステリーは確かに面白い。
今回の新作はミステリーだったから、そう思った。
またハヤカワ文庫から出していて、ハヤカワの編集者だけは心から信頼しているから、俺は興味を持ったわけだけれど、これからもハヤカワから出すのだろうか。
しかし様々な出版社から出している津原が、ハヤカワから出し続けるようになったきっかけは、たしか一昨年の百田尚樹が日本国記を出した時のことだったっけか。
幻冬舎から「ヒッキーヒッキー~」の文庫化が決まっていた津原が、同じ幻冬舎から出ている日本国記の内容を「Wikipedia」の盗作とか言って批判したんだった。
津原曰く、「内容も趣旨も批判していないが、盗作したことに問題がある」とのこと。
さらにいえば、「ここで謝罪しておけば、百田氏、幻冬舎のためにもなる」。
なるへそ、それは納得だ。
しかし百田本人は認めていないのでなんとも。
でもそれで、津原の「ヒッキーヒッキー~」の文庫化が中止となれば、津原も怒って当然。
正月あけ、担当を通じ、『日本国紀』販売のモチベーションを下げている者の著作に営業部は協力できない、と通達されました。「どうしろと?」という問いに返答を得られることなく、その日のうちに出さない判断をしたとのメール。それ以前の忠告警告はありません。それどころか話に頷いてたくせに。
— 津原泰水=やすみ (@tsuharayasumi) 2019年5月14日
うちから出ているものを批判する奴の文庫化を、協力なんてできない、とはねつけられたと。
カバー画もほとんどできていたらしいからひどい。
このことが世間に知れ渡ると、幻冬舎いわく「「ヒッキーヒッキー~」の単行本が売れなかったから」と言って、文庫化を中止にした理由を急に変えてきたとのこと。
それで本当なのかと追及されれば、幻冬舎は実売部数が「1800部」だったことを公表。
普通、実売部数なんて作家本人にも知らされない。
現実を知って、作家が傷つくのを防ぐためだ。
しかしこれはひどい。
ましてや2000に乗っていないなんて、新人のデビュー作でももうちょっと売れるんじゃないかと思うくらい。
それ以来、津原は自分を「日本で最も売れない小説家」と自虐してしまった。
多数の作家から、幻冬舎には大バッシング。
「やりすぎ」って、そりゃあ当然だろう。
実売部数を公表なんて、どうしてこんな明らかにタブーなことをするんだろう。
幻冬舎って私企業だから、なんでもありなんだろうか。
もうつぶれちまえよあそこ。
幻冬舎と契約していた作家から、いままでの不満があふれかえっていたぞ。
印税が10パーという契約だったのが、実際は8パーしかもらえなかったとか。
出版社の手違いで発売日が一週間も遅れたのに、謝罪も迷惑料も出ないとか。
もうつぶれちまえよ、あそこ。
まあそれで、ハヤカワから出たことはよしとしよう。
ハヤカワには俺みたいな根強いファンが多いから、つまりハヤカワを前面に信頼している人は、ハヤカワから出たものは何でも買う(俺はそこまでのファンではない)。
そういう人たちに津原を知らしめたことは大いに喜ばしいことだし、なにより津原の才能が本物であることは読者ならだれもが知っている。
ちなみに津原の代表作は下の2作。
- 作者:泰水, 津原
- 発売日: 2014/04/08
- メディア: 文庫
でもこれから出るのも、俺は楽しみにしている。
売れなくてもなんとか続けてくれ、津原。