ネタがないから「パンデミック」
いよいよネタがなくなってきた。
さすがブログのセンスがないだけあるなと自問自答。
しゃーねーから本屋と同じネタをやる。
つまり、今は外出自粛もあって、パンデミック小説が熱いという話。
元祖「パンデミック」
まずはパンデミックの元祖が何かって話。
これは俺の持論を入れるしかない。
だって分かるわけがないのだ。
そして俺が読んだことのあるパンデミックものの中で最古は、みなさんご存知、H・G・ウェルズ。
俺みたいに何かと歴史を語ろうとすると、文学では決まってウェルズが出てくるから面白くない。
そしてその作品というのは「盗まれた細菌」。
内容(「BOOK」データベースより)
細菌学者の研究室からコレラ菌を盗み出した無政府主義者は、テロを企むか…(『盗まれた細菌』)。操縦経験がないのに、最新の飛行機で無謀にも空へ飛び立った青年が村に大騒動を巻き起こす(『初めての飛行機』)。SFだけではない、ウェルズの新たな魅力を発見できる愉快な11篇。
とはいえきっと、異論がある人も多いだろう。
例えばボッカッチョの「デカメロン」。
これもパンデミックの範疇に入る作品であることは認めるし、病気的な内容が含まれている作品ではダントツで最古だろうが、俺の中での「パンデミック」のジャンル性にそぐわないのだ。
俺の中でのパンデミックをがんばって説明してみると(あまり深く考えたことがなかったので、いざ書いてみると難しい)、感染症におけるドキュメンタリー的実況性と緊迫性を描く作品、といったものだろうか。
よし、「デカメロン」が含まれないような定義はできただろう。
まあそういうわけで、好きな人は自分なりの定義を考えてみてほしい。
今さら言うのもなんだけれど、俺はドキュメンタリー的展開は嫌いじゃないが、それは感染症でなくてもよく、むしろそれ以外の方が好きなので、「パンデミック」にこれといった思い入れはない。
有名パンデミック作品リスト
1、ペスト
- 作者:カミュ
- 発売日: 1969/10/30
- メディア: ペーパーバック
内容(「BOOK」データベースより)
アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相や、過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を寓意的に描き込み圧倒的共感を呼んだ長編。
これを読まなきゃ始まらん。
元祖「文学」パンデミック。
もはやありきたりになったパンデミック小説では、「予言していた!」とかいうフレーズが売り文句らしいが、この作品以上にリアルなものを知らないので、最近の小説は陳腐に見える。
断言する。
「予言性」という点において、これに敵うパンデミック小説は今後生まれない。
それは作家ならみんな気づいてるんじゃないかな。
だからみんな予言をしようとはしていなくて、結果として「文学」ではなく「想像性(SF性)」を追求するんだろう。
ウイルスの設定の濃厚さとか、人がたくさん死ぬというスケールの大きさとかね。
だから素直にそう書けばいいのに、「予言」というフレーズをわざわざ使うから、本を買った読者は「そうかなあ」と期待を裏切られた気分になる。
まあそうしないと買ってすらくれないんだろうから仕方ないが。
2、復活の日
- 作者:小松 左京
- 発売日: 2018/08/24
- メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
吹雪のアルプス山中で遭難機が発見された。傍には引き裂かれたジュラルミン製トランクの破片。中には、感染後70時間以内に生体の70%に急性心筋梗塞を引き起こし、残りも全身マヒで死に至らしめるMM菌があった。春になり雪が解け始めると、ヨーロッパを走行中の俳優が心臓麻痺で突然死するなど、各地で奇妙な死亡事故が報告され始める―。人類滅亡の日を目前に、残された人間が選択する道とは。著者渾身のSF長編。
パンデミックSFの金字塔。
2年前に新装版が、それも3つも同時に出て、どれを買おうか悩んだ挙句、全部買ったSFファンも少なくないだろう(要するに俺のこと)。
想像性ではこれが最上位。
さすがはSF御三家、小松左京。
この作品は「文学性」も高い。
読めばわかるが、パンデミック下の人間の心情描写は極めて巧み。
低いのは「ドキュメンタリー性」だ。
なんせ開始時点で、南極以外の人類がすべてウイルスで全滅してしまっているのだ。
ウイルスがどのように広まるのか、それで社会がどうなっていくのかという緊迫性は一切ない。
俺はそっちの方が好きだけど。
3、天冥の標Ⅱ 救世群
内容(「BOOK」データベースより)
西暦201X年、謎の疫病発生との報に、国立感染症研究所の児玉圭伍と矢来華奈子は、ミクロネシアの島国パラオへと向かう。そこで二人が目にしたのは、肌が赤く爛れ、目の周りに黒斑をもつリゾート客たちの無残な姿だった。圭伍らの懸命な治療にもかかわらず次々に息絶えていく罹患者たち。感染源も不明なまま、事態は世界的なパンデミックへと拡大、人類の運命を大きく変えていく―すべての発端を描くシリーズ第2巻。
約10年、全17巻の刊行を経て、2019年に日本SF大賞を受賞した、2010年代を代表する大型SFシリーズ。
実際に過去の全SF小説の中で、40年以上続いているグインサーガに次いで、これが2番目に長いとのこと。
グインサーガはいまだに続いているが、作者の栗本薫が死んで、ほかの作家が終わらせられずに書き継いでいるのだから、単独のSF作家のシリーズでは「天冥の標」が最長ということになる。
この小説の特徴は、驚くほどのスケール。
舞台となる時代設定は以下。
Ⅰ 西暦2803年
Ⅱ 西暦2015年(本作)
Ⅲ 西暦2310年
Ⅳ 西暦2313年
Ⅴ 西暦2349年
Ⅵ 西暦2500年
といった感じ。
想像力がとち狂うが、この本のいいところは、小説がそれぞれ独立しているところ。
全部がそうとは言わないけれど、とにかくこの「天冥の標Ⅱ」は単体でも楽しめる。
というか、時間軸的には一番最初だから、シリーズ上の予備知識なんていらない。
「エンタメ性」「スケール」ではこれが頂点。
文章も一番読みやすかった気が。
4、首都感染
内容(「BOOK」データベースより)
二〇××年、中国でサッカー・ワールドカップが開催された。しかし、スタジアムから遠く離れた雲南省で致死率六〇%の強毒性インフルエンザが出現! 中国当局の封じ込めも破綻し、恐怖のウイルスがついに日本へと向かった。検疫が破られ都内にも患者が発生。生き残りを賭け、空前絶後の“東京封鎖”作戦が始まった。
読んだことないけどね。
「ペスト」に次いで売れているらしいので。
あらすじを読む限りでは、一番コロナの現状に近いストーリーではある。
しかしね、書いておいてなんだけど、面白くなさそう。
俺は読まない。
売れてるよ! という近況報告。
まとめ
俺がペストを初めて読んだのは高校一年のころ。
さしたる理由もなかったけれど、たしかそのときの保健体育の授業で、クラスメイトがひとりずつ、自分に割り当てられたテーマについてプレゼンをするという授業があった。
そこで俺に与えられたテーマが「感染症」だったのだが、それでプレゼンのために調べているうちに、ペストの事を知り、その数ヶ月後くらいに本屋で「ペスト」というタイトルの本を目にして買ったわけだ。
だからペストについては少しばかり知識があって、例えばワクチンの名前が「ペニシリン」であることや、魔女狩りが行われた経緯などである。
しかし俺はもう「ペストなら読んだことあるぜ、ぐはは」と自慢もできなくなったのだろう。
それもこれも、コロナによる恩恵ととれなくもない。
100万部も売れたら、十分に「国民的古典」だ。
コロナには迷惑をかけられてばかりではなく、ぜひ恩恵ももらいたいと思う今日この頃。