読書家のための偏見作品紹介

主に小説の紹介、書評で人生を設計したい

<作家紹介>元祖ハードSF作家「アーサー・C・クラーク」

某政党が言い張るように、われわれ民衆のあいだでは、にっくき存在として見なされやすいNHKさま。



しかし国営放送局だけあって、取り扱うジャンルについては浅いですが広いです。



読書家のみなさんは「100分de名著」というコーナーをご存知でしょうか。



毎週1回25分を4回分、つまり1か月でひとりの作家について紹介するという番組であります。



実はわたくし、よく見ておるわけですが。

それがなんと今月のテーマは、二十世紀SFにおける最大の巨匠、アーサー・C・クラークなんであります。



最近はSF作家がよく取り上げられると、早川書房の編集者が言っておられましたが、まさしく時代はSFに近づいておりますゆえ、テーマとして扱いやすいのでしょう。



いい機会なのでここでも特集記事を書くことにしました。

ここでブログ作者の偏見による基礎を身につけ、NHKで客観的な概要を学びましょう。


作家紹介

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2005年 自宅にて

名前     Arthur Charles Clarke  アーサー・チャールズ・クラーク

誕生     1917年12月16日  イギリス サマセット州マインヘッド

死没     2008年3月19日(90歳没)

代表作    2001年宇宙の旅 幼年期の終り 
       宇宙のランデヴー 楽園の泉

主な受賞歴  ヒューゴー賞 ネビュラ賞 ローカス賞



クラークは二十世紀SFにおける最大の作家とされ、世界一有名なSF作家であることは間違いありません。



ほかにも、ロバート・A・ハインライン、アイザック・アシモフと並んでビッグ・スリーと称されるSF界の大御所であります。



おそらくはこの3人を並べて覚えている人が多いでしょうし、なにより3人とも作風が違うので、どれが好みかという話をした人も多いでしょう。



どうでもいいことですが、わたくしはこのクラークと誕生日が同じです。

そして二十一世紀のSFに最も影響を与えたとされるフィリップ・K・ディックも同じ生まれです。

この日は極上な記念日なんですね。もしかしたら二十二世紀に最も影響を与えるSF作家が生まれてくるかもしれません。





SF作家 アーサー・C・クラーク

作家としてのクラークの特徴は、ハードSFというジャンルを開拓したことにあります。

ハードSFとは、専門的な科学技術に重きを置いた小説のことで、新技術や物理学の理論などをテーマとし、物語を進めます。



これは二十世紀のSFで作りこまれたジャンルで、ハインラインアシモフも同様にハードSFを執筆しています。

特にアシモフがロボットの小説を書き続けたのは有名ですよね。



クラークのデビュー作である「宇宙への序曲」は、核力をエンジンとしたロケットで、人類初の月面着陸計画が行われるという小説です。


この物語の計画はなんと、実際のアポロ計画とほとんど同じなのですが、なんと書かれたのはアポロ計画から二十年も前。

おそるべき先見の明であります。



なによりクラークの月面の想像力がおもしろい。

なんせ当時は、月面は完全に未知の場所だったわけですから。



月面にマグマの湖があったり、知性体の跡が発見されたりと、今の人が読むと笑ってしまうのですが、まあこれは物語の終盤で、テーマではありません。



あくまで物語は計画を進めてから実行するまでの話なので、月面については科学性など必要なく、むしろ小説家としての想像力といえます。




科学者 アーサー・C・クラーク

ハードSFは実はもうひとつ、大切な側面を持っています。

それは科学者の思いついた新技術のプレゼンの場という側面です。



クラーク、アシモフハインラインの3人ですが、じつは彼らは小説家である以前に科学者です。



あくまでわたくしの偏見で申しますと、この中でもアシモフハインラインは小説家に重きを置いていて、クラークは科学者に重きを置いていたように思います。



そのクラークの科学者としての側面がこれまたすごい。

一番有名なのは人工衛星の論文です。



なんと、人工衛星のアイデアを正式に論文にまとめ、初めて発表したのはクラークなんです。



さらには、さきほど紹介した「宇宙への序曲」にはすでに静止衛星のアイデアが書かれており、クラークは論文内で自分の小説を参考文献に入れるという超人技巧をやってのけます。



スマートフォンを使っているひとたちは、全員クラークに頭が上がらないわけです。

SFをなめるなよ。





代表作

クラークの著作でもっとも有名なのは「2001年宇宙の旅」だと思います。

映画監督のスタンリー・キューブリックと、クラークが共同で書いたシナリオ。

数多のSF作家が、この作品によってSFを読み始めたというほどの傑作なのです。



そしてSFファンの間でクラークの最高傑作と評されるのが「幼年期の終わり」という作品。

幼年期の終り

幼年期の終り

異星の知性体、すなわち宇宙人があらわれ、地球人を支配するという物語です。

家畜的テーマはオーウェル動物農場を、異星人というテーマではウェルズの宇宙戦争を、それぞれオマージュしたような部分がありますが、科学的整合性が高い分、異常なほどにリアル。



しかしそれでも、一見ありきたりな小説に思えますが、なんと物語の終盤が恐ろしいことに。

人類の行く末がテーマとなっており、このテーマはSFでは頻出なのですが、その中でいまだに頂点とされる怪作です。



すでにSF小説の名作古典として扱われており、日本ではSF専門の早川書房のほかに、古典の翻訳で知られる光文社が出版しているほど。

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

  • 作者:クラーク
  • 発売日: 2007/11/08
  • メディア: 文庫


日本でも昔から親しまれ、かの三島由紀夫が大絶賛していたことでも知れらていますから、SFファンでなくとも読んでおかねばなりますまい。
むふふ。





おわりに

作家紹介というのは効率がいいですね。

一度に何冊も紹介できるので。



なんにせよNHKがクラークを取り上げているというのには衝撃を禁じえません。



見れない人はこれを買うのもおすすめ☟

わたくしはとっくに買いました。



これを機にハードSFもぜひご一読ください。