読書家のための偏見作品紹介

主に小説の紹介、書評で人生を設計したい

<レビュー>攻殻機動隊2.0を見たぞ

攻殻機動隊は1995年にアニメになって、けれど日本では一部のカルト的なファン以外には見向きもされず、何事もなく消え去ったあとになぜかアメリカでDVDが売られ、ようやくそこで大ヒットを飾ったという経緯をたどっている。

つまり日本の作品であるにもかかわらず、アメリカ人気の逆輸入だったわけである。

ジャパニメーションという単語を作った作品とさえ言われるくらいだから、日本のアニメファンは見ておかねばならない作品なわけだ。



その2年後くらいには映画になっていたはずだけれど、自分はそのオリジナルの方しかしらない。

今回見たリメイクは初体験なのだ。ブックオフでブルーレイが安売りしていたので買ったというだけで。






とはいえ実はレビュー的なものをちょくちょく読んでいるので、大体の評価は知っている。

つまりは不評を買っているという事実を。



とりわけ記憶に強いのは伊藤計劃の映画評論に載っていたもの。

なんせ書籍になっているくらいだし、伊藤計劃が映画通というのは有名だもんね。



伊藤計劃記録 II (ハヤカワ文庫JA)

伊藤計劃記録 II (ハヤカワ文庫JA)




その伊藤氏が最初にディスっていた冒頭のCGシーン。

確かにひどかった。文字通り開いた口が塞がらない。



まだCGが拙い時代だったという擁護を聞いたのだが、そんなわけないだろ。

あんだけひどいビット、見たことないのだが。



しかし映像の解像度というか、緻密さや鮮明さの磨かれ方はすごかった。

攻殻のブランドで妙にハードルが高くなっているから、見ている人は盲目だったのかもしれないが、2008年であれは驚異のクオリティ。

ジャパニメーションってすごいね。



世界観は当時の香港と言われているが、今見ると香港の変化に驚く。

よく攻殻機動隊の魅力は設定の割に、日常や生活、全体的な風景が現在のそれに近しいところだと言われているけれど、今見るとまったくそうは思えないのだから、もはやあの2029年の日本は異世界

今よく見る異世界の世界観がいかに拙く、イメージに乏しいものなのかが窺えるので見ておくべきだろう。



もうひとつ。

声優の榊原良子についてもよく言及されるのだが、つまり「人形つかい」の本来なら機械的なキャラクターが、榊原の演技のせいで人間くさくなってしまっているという批判である。

確かに榊原の演技はすばらしく丁寧で、女性がもつ演技の魅力が前面に出ているというか、理性的で知的な雰囲気の中に感情が見え隠れするのがいいらしいのだが、人形つかいには似つかわしくなかったという指摘は首を縦に振ってしまう。

しかしもともとの方も自分はさしてうまいとも思わなかったし、別に人間くさいならそれはそれで、義体がより精巧なだけだと受け取ればいいだけのことだと思うのである。

なんとも好みの問題だが、気になる人は真にSF好きと言えるだろう。



とりあいず久しぶりに原点回帰して面白かったので挙げておく。