<書籍レビュー>「裸のランチ」を読んだぞ
実は高校生の時に一度読んでいます。
回数的には三度目。
それだけ中毒性のある作品。
読み返そうと思ったきっかけは、ジュンク堂で見かけた河出文庫のフェア本棚。
読書家声優として知られる斉藤相馬が全面協力らしく、河出文庫のあらゆる帯にイケメンの顔が載っていたわけですが。
自分は斉藤相馬の書評があまり好きではない(小声)ので対抗心を燃やしたわけですね。
なんせこんな伝説的奇書の裸のランチをおすすめにのせているわけですから、その選別眼を少し評価してしまったんですね。
そんな根暗もイケメンも惹きつける一冊をレビューします。
作品紹介
- 作者:ウィリアム・バロウズ
- 発売日: 2003/08/07
- メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
一九五〇年代に始まる文学運動は、ビート・ジェネレーションを生み出した。ケルアック、ギンズバーグら錚々たる作家たち(ビートニク)の中でも、バロウズはその先鋭さで極立っている。脈絡のない錯綜した超現実的イメージは、驚くべき実験小説である本書に結実し、ビートニクの最高傑作となった。映画化もされた名作の待望の文庫化。
こんなものが世界的に読まれていることにまず驚き。
人間の脳ってどれだけ狂っているんですかね。
初読から数年がたち、読書幅も書籍の知識も大きく広がりました。
そのうえで何度読んでも思うのですが、やはりこれを超える奇書は存在しないですね。
これは本当に人間が書いたものなのかと、しかし人工知能には絶対書けないだろうなと、つまり人類を逸脱した人間にしか書けないのだと、そう思うわけですね。
日本にも誇らしげに三大奇書なんてものがありますが。
小栗虫太郎『黒死館殺人事件』
中井英夫『虚無への供物』
夢野久作『ドグラ・マグラ』
こんなの奇をてらった煩悩ですよ。
だって普通に面白いですもん。誰が読んでも。
でも裸のランチって誰に勧めればいいんだ…………
その書評って需要あるんですかね。
評価
シナリオ | |
---|---|
構成 | |
文章 | |
キャラクター | |
世界観 | |
総合評価 | |
おすすめ度 | |
シナリオってのが存在しない時点でお話を楽しむもんじゃない。
これは小説という媒体そのものの潜在力を測るものだもんね、と言い聞かせなきゃ読み進められないです。
まあ要するに。
小説ってここまで無茶苦茶できるんだあああああああああああああああああ
って思う訳ですね。
イメージだけで小説が進む。
意味もなく町の光景、人々の様子、麻薬のはなしがされるだけで、ストーリーなんてものがほとんど存在しない。
ある種の麻薬体験なのかもしれません。
もちろんバロウズは麻薬やってた人だからね。
短編集と読めなくもないんですが。
時々面白いショートストーリーが挟まることもあるけど、人の肛門ほじくり回したり麻薬づけにするって、そういう話ですからね。
こんなもん誰に勧めればってほんとに思いますね。自分は大好き。
ただ一つ。
読書において、文章を求め、文章を楽しんでるって人は絶対読むべき。
ウィリアム・S・バロウズはそれくらいの強烈で、奇抜で、珍妙で、芸術的な文章の持ち主。
英文学文体に与えた影響は、少なくとも自分は圧倒的だと思ってるし、何よりSF方面では神格化されている。
頻出する「グリセリンのような透明」って比喩は、最近のSF小説なんかどれ読んでも使われているくらいなんですよね。
要するにこの本は、麻薬、爆薬、糞尿だけが登場しまくる文章を楽しみましょってもの。
また三年後くらいに読も。